COLUMN
[日本代表ツアー2002B]
マドリッドの冷たい雨と、ロッテルダムの祭り 02.5.16
その日の夕方からマドリッドは雨になった。5月7日、日本代表がレアルマドリッドと対戦した日だ。
マドリッドに行くのは3度目。でも、一度目はなんと日帰り取材で滞在時間わずか6時間、二度目も移動のために前泊、後泊しただけだったので、マドリッドのことはほとんどわからない。
ちなみに一度目は中田英寿がペルージャに移籍した際に代理人の堀田氏をインタビューするために突撃的に行ったのだが、出発当日の午前中に突然スペイン行きが決まり、まるで新宿あたりに買い物に行くかのように出掛け、飛行機に乗ってインタビューをして、そしてそのまままた飛行機に乗って帰ってきた。それでも木曜の夕方に成田を経って、成田に戻ったのは土曜の夜だったから、ヨーロッパというのは遠いなあ、と妙な実感をしたのを覚えている。
二度目はもう少しまともで日本代表の遠征取材だったが、それでもマドリッドに深夜到着して翌早朝にはコルドバへ向かい、帰りもその逆のコースを辿ってコルドバからマドリッドへ入って一泊して翌朝、成田へ向かって飛び立った。
どうやらマドリッドは僕には(いまのところ)縁がない場所らしい。だから、あのホテルとか、あの店とか、そんな町を構成する基本的で表面的な要素にすら何のアテもいまだにない。
今回もマドリッドに滞在するのはわずか2泊。しかも深夜到着して、朝出発するパターンだったから、滞在時間はほぼ30時間。それでもこれまでではたぶん最長で、試合当日には夕方まで十分に自由時間があった。
おかげで町をぶらつくこともできたのだが、結局、僕は余計な(いや余計ではないが、僕にとってはムダ使いっぽい)出費をしてしまっただけで、相変わらず何も印象に残らなかった。
どうもマドリッドは相性が悪い。そんなふうに思っていると、さらに相性なんて悪くなっていくものなのは十分承知だが、いまのところ僕はそう思っている。
ちなみに冷たい雨と思いがけない寒波に震えながら見たゲームも、あまりにひどいものだった。あまり面白くなかったので、一緒に観戦していた友人ライター氏と本当にくだらない退屈まぎらしのやけっぱちの掛け合いをしながら見たくらいだった。
ヨーロッパまで大枚はたいてやってきて、この試合では…なんてボヤいたものだが、もちろんそれはただの愚痴。本当に本当のことを言えば、どんなゲームにも、どんな状況にも、僕らにとってのネタはある。
だからライターでよかったなぁと自分を慰めながら、この相性の悪いマドリッドを素敵な場所に変えるためにも、満員のサンチャゴベルナベウでレアルの本気の試合を見てみたい、と強く願っていた。
日本代表の試合の翌日には、僕はまっすぐ帰国せず、ロッテルダムに寄った。実はそこでもそれほど楽しい思い出はないのだが――特にホテルフロントの対応は最悪だった――、デカウプからわずか数キロのホテルで、テレビで観戦したUEFAカップの決勝は刺激的だった。
キックオフ前まで人で溢れ、ビールの匂いが充満し、大騒ぎしていた町が、試合中は沈黙し、優勝が決まって数分後から再び、人が繰り出し、ビールにまみれ、クラクションが鳴り響き、警官と酔っ払いが町を闊歩していた。
試合を生で観戦できなかったのは残念だったが、かつて都市国家であったというヨーロッパにおけるサッカークラブの位置づけのようなものを、ちらっと垣間見ることができて、いい蓄積になったと思う(それにしても、こんな国が出れないワールドカップに開催国として出場する日本の責任は大きいなぁ)。
とにかく、相性のいい町も、悪い町も、色々あるけれど、やっぱり「当たり」「はずれ」があるから、サッカーも旅も面白いと感じた次第。
そんなわけで小野伸二がUEFAカップ王者に輝いた翌日、僕はアムステルダムから成田へ向けて飛び立った。腰の調子がよくなかったことと、仕事の関係で、オスロへは行かずに。
だから、ノルウェー戦はテレビで見た。またその間には「トルシエ監督が代表発表会見に出席しない」という報道にも接した。そうしたことにも色々思うことはあるのだが、それはまた別の機会に。
ただ久々に、本当に久々にテレビで見た日本代表のゲームは、これまたちょっと新たな視点を得られる経験だった。旅に出るのも、旅に出ないのも、どちらも旅みたいなもんだな、なんて訳のわからないことを考えたりした。

