Jリーグの将来像                      08.7.23

 J2は22チームまで――そんな「J2リーグの将来像」が今週正式に決まった。
 J2のみならず、J1にも、そして現在Jリーグ入りを目指しているクラブにとっても大きな意味のある決定なので、ここで紹介しつつ、その意味について解説したい。

 今回決まったことを現実に起きそうな時系列で紹介すれば、まず……
「J2リーグが18クラブになったシーズンからJ1とJ2の入替戦を廃し、リーグ戦成績をもって昇降格要件とする」
 J1とJ2の入替戦がなくなるのである。
 J2が18チームになった後は、J1の下位3チームは自動降格、J2の上位3チームは自動昇格することになるのである。J1の下位チームとっては、残留争いはこれまで以上に切迫感のあるものになるだろう。

 しかも、これは早ければ来季にも実現する。
 現在、準加盟チームは栃木SC、ガイナーレ鳥取、ファジアーノ岡山、ニューウェーブ北九州、カターレ富山の5チームあり、しかもJFLでは栃木FCが1位、ファジアーノ岡山が3位、カターレ富山が4位につけている(J2への昇格条件はJFL4位以内)。
 現在J2は15チームだから、来季3チームがJ2に昇格(加盟)すれば18チームになる。つまり入替戦は今季が見納め、そんな可能性も十分あるということだ。

 続いて「J2リーグのクラブ数を22まで増やす」。
 これは言い換えればJ2は22で扉を閉めるということだ。前述した準加盟チーム以外にもJリーグを目指しているクラブは全国にある。
 そんなクラブにとっては「あと7チームでJ入りは終わりですよ」と宣告されたことになる。
 実を言えば、こうした決定を見越して、「(Jリーグに)上がるならいましかない」という焦燥感が、ここ2、3年Jを目指すクラブには充満していた。だから、無理な投資をしてでもチーム力の強化を図るチームが少なくなかった。
 あと7チーム、と正式に決定したことで(しかも来季3チーム昇格するとすれば、残りは4チームである)そうした動きはさらに活発になるに違いない。地域リーグあたりから急激な選手補強をして一気に逆転を狙うチームが出てくることも考えられる。
 もちろん無理な投資はクラブ経営を歪ませるリスクもある。楽しみなようでもあり、不安でもある。

 もちろん、扉が完全に閉ざされるわけではない。
「J2リーグが22クラブになったシーズンから、J2とJFLの入替制度を導入する」
 つまり、22クラブになった後もJFLからの昇格は可能ということである。
 J1とJ2の昇降格同様、ここも入替戦はなく、最大3チームの自動昇降格だ。
 この決定は「Jを目指すクラブ」だけでなく、現在J2下位に位置しているクラブにとって大きな意味を持つ。
 なぜなら「J2からJFLに降格したクラブはJリーグ会員資格を失う」ことになってしまうからだ。
 つまり(当然のことながら)JFLに転落したチームは、「Jクラブでさえなくなってしまう」のである。

 Jクラブでなくなることのインパクトは相当大きい。考えられるのは「J」のロゴや呼称を使えなくなる。これは周囲への影響がかなり大きい。スポンサーも獲得しにくくなり、無論テレビでの中継もなくなる。
 試合告知や結果にしても、Jクラブであれば(J2だとしても)それなりの露出がメディアで期待できたが、JFLになった途端、これがなくなる。早い話、JsGOALからもチーム名が消えるのだ。
 まして戦う舞台はJFL。相手も含めて観客動員の激減は必至である。

 そして最大の問題は分配金がなくなること。現在J2クラブであってもJリーグからの分配金は1億円を超えている。それを経営の大きな柱としているクラブも多いのである。
 これが単純になくなる。経営規模の大幅な縮小をせざるをえなくなるということだ。当然、選手も大量放出、根本的にチームを作り直さなければならなくなる。事実上の解体である。

 そんなふうに考えていけば、今回の決定にもっとも戦々恐々としているのはJ2の下位クラブだろう。早ければ3年後、遅くとも4、5年後には、クラブ存続の危機に立たされる危険性があるからである。

 もちろんJ2が22クラブになれば、J1・J2合わせて40クラブの大所帯になる。分配金も当然いまよりは目減りすることになる。
 そして、もちろんJ2チームの認知度はかなり下がるに違いない(40チームもあるのだ。全チームの名前を言えるファンなんてほとんどいなくなるのではないか)。
 事実上、J1でなければ「Jリーグ」ではない、そんな時代になるのである。

 今回決まった「Jリーグの将来像」。それが暗示する未来を想像すると、僕はかなりリスキーな気がする。
 いずれにしても余波は計り知れないほど大きい。



*この原稿は「携帯サイト」に掲載されたものです。